【 旧安保と新安保における相違点 】

旧安保

新安保

1

 

 

 

 

内乱条項

 

削除

米軍の日本防衛義務なし

「日本の安全に寄与することができる」

・・・しなくても条約違反ではない,と言うこともでき,困った

5

 

明記「日本国の施政権下に…対処することを宣言する」

極東条項

「極東の安全のために」

6

 

存続「極東の国際の・・・・ために,日本の基地を使用する」

2

 

第一条にかかげる権利を第三国に与えない

 

 

削除

 

3

行政協定

6

地位協定「別個の協定及び合意される他の取極」

4

 

失効にあたっては,両国が認めなければいけない

10

10年の効力存続。その後は一方の申し出があればよい

 

 

純軍事的内容

かつて欧米諸国が植民地におしつけたような内容であった

 

 

包括的な内容

国連との関係もより明確化

独立国としての体裁を確保した

 

事前協議制

交換公文により,6条「極東条項」による在日米軍の行動を日本側が制限できるようにしたが,現実に協議を持たれることは現在までない。

 

 

●留意点

5

日本の制約(憲法9条)を配慮した共同防衛範囲を規定

 

6

アメリカからみた駐留軍の行動範囲として規定。

しかし,「極東とはどこまでか」という野党の攻勢にあう。在日米軍は日本の基地から出撃するわけで問題となったわけである。そこで,条約付属文書である交換公文によって「事前協議」をする約束を交わしてあることをあげ,政府は「日本は米軍の行動を制限できる歯止め」がある,として攻勢をかわす。

 

条文ではふれない

アメリカは「条約に書き込む」ことをおそれた部分は別の文書として体裁を整える形を好んだ。

 旧安保における「行政協定」,新安保における「条約付属文書」である。

 とくに後者は日本の岸首相が米国務長官ハーターに「事前協議してくれますね」と伝え,返事として「確認しました」としただけの「交換公文」である。よって条約より重みは低く,そのこともあり事前協議は一度も日本になされることはなかった。

 

旧安保における行政協定の不平等な点 ⇒新安保では「地位協定」として改善ははかられたが

第1条                 「全土基地方式」平時,有事を問わず日本のどこにでも米軍基地を置けるというもの。もちろん土地貸借の交渉は必要だが,潜在的に基地をおけることが述べられている。

3-1 基地以外への出入り自由。日本側はチェックできない。

第9条                 軍人,軍属,家族の出入国自由。在日米軍という身分を失わないかぎり,日本側は退去命令を出せない。パスポート携行は必要だが,日本政府のチェックまでは規定していない。

第11条                 税制規定「日本政府に従う。ただし・・・」とし,ほとんどを免除するようなもの。関税なし,税関検査なし,私有品なし。

第14条                    特殊契約者=米国の業者(米軍との関係で来日する者)も特権。仕事がすんでも日本にいすわるという問題

第17条                         NATO諸国と交わした刑事裁判権協定が発効したら,日本も同様のものを求めていい⇒発効まではアメリカに領事裁判権がある。⇒しかし,日本はその後も求めなかった。(米側の公開文書では)だが,あまりよくないとして改められる。現在の地位協定では裁判権は日本にあるが,「逮捕」に至るまでに制限がある(米側が容疑者をひきわたしてくれるまで待つしかない)。米側が基地内で事情聴取して認めるに及ばなければ引き渡してくれないわけだ。米側が日本の取調べ方法(弁護士をつけないこと,しばかれるイメージ)に不信を抱いていることも一因。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(旧)日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約

昭和27(1952)年4月28日 条約第4号


 日本国は、本日連合国との平和条約に署名した。日本国は武装を解除されているので、平和条約の効力発生の時において固有の自衛権を行使する有効な手段をもたない。

 無責任な軍国主義がまだ世界から駆逐されていないので、前記の状態にある日本国には危険がある。よつて、日本国は、平和条約が日本国とアメリカ合衆国の間に効力を生ずるのと同時に効力を生ずべきアメリカ合衆国との安全保障条約を希望する。

 平和条約は、日本国が主権国として集団的安全保障取極を締結する権利を有することを承認し、さらに、国際連合憲章は、すべての国が個別的及び集団的自衛の固有の権利を有することを承認している。

 これらの権利の行使として、日本国は、その防衛のための暫定措置として、日本国に対する武力攻撃を阻止するため日本国内及びその附近にアメリカ合衆国がその軍隊を維持することを希望する。

 アメリカ合衆国は、平和と安全のために、現在若干の自国軍隊を日本国内及びその附近に維持する意思がある。但し、アメリカ合衆国は、日本国が、攻撃的な脅威となり又は国際連合憲章の目的及び原則に従って平和と安全を増進すること以外に用いられうべき軍備をもつことを常に避けつつ、直接及び間接の侵略に対する自国の防衛のため漸増的に自ら責任を負うことを期待する。

 よって両国は次の通り協定した。


第一条

 平和条約及びこの条約の効力発生と同時に、アメリカ合衆国の陸軍、空軍及び海軍を日本国内及びその附近に配備する権利を、日本国は、許与し、アメリカ合衆国は、これを受諾する。この軍隊は、極東における国際の平和と安全の維持に寄与し、並びに、一又は二以上の外部の国による教唆又は干渉によつて引き起こされた日本国における大規模の内乱及び騒じょうを鎮圧するため日本国政府の明示の要請に応じて与えられる援助を含めて、外部からの武力攻撃に対する日本国の安全に寄与するために使用することができる

第二条

 第一条に掲げる権利が行使される間は、アメリカ合衆国の事前の同意なくして、基地、基地における若しくは基地に関する権利、権力若しくは権能、駐兵若しくは演習の権利又は陸軍、空軍若しくは海軍の通過の権利を第三国に許与しない

第三条

 アメリカ合衆国の軍隊の日本国内及びその附近における配備を規律する条件は、両政府間の行政協定で決定する。

第四条

 この条約は、国際連合又はその他による日本区域における国際の平和と安全の維持のため充分な定をする国際連合の措置又はこれに代る個別的若しくは集団的の安全保障措置が効力を生じたと日本国及びアメリカ合衆国の政府が認めた時はいつでも効力を失うものとする。

第五条

 この条約は、日本国及びアメリカ合衆国によつて批准されなければならない。この条約は、批准書が両国によつてワシントンで交換された時に効力を生ずる。


 以上の証拠として、下名の全権委員は、この条約に署名した。

 千九百五十一年九月八日にサンフランシスコ市で、日本語及び英語により、本書二通を作成した。

日本国のために             
吉田茂
アメリカ合衆国のために         
ディーン・アチソン
ジョーン・フォスター・ダレス
アレキサンダー・ワイリー
スタイルズ・ブリッジス


日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約

Treaty of mutual cooperation and security between Japan and the United States of America
(日米安全保障条約・安保条約)

1960(昭和35)年1月19日 ワシントンで署名
1960年6月19日 国会承認
1960年6月23日 批准書交換、効力発生

1960(昭和35)年6月23日 条約第6号


 日本国及びアメリカ合衆国は、 両国の間に伝統的に存在する平和及び友好の関係を強化し、並びに民主主義の諸原則、個人の自由及び法の支配を擁護することを希望し、また、両国の間の一層緊密な経済的協力を促進し、並びにそれぞれの国における経済的な安定及び福祉の条件を助長することを希望し、国際連合憲章の目的及び原則に対する信念並びにすべての国民及びすべての政府とともに平和のうちに生きようとする願望を再確認し、両国が国際連合憲章に定める個別的または集団的自衛の固有の権利を有しているを確認し、 両国が極東における国際の平和及び安全の維持に共通の関心を有することを考慮し、 相互協力及び安全保障条約を締結することを決意し、よって、次のとおり協定する。


第一条(平和の維持のための努力)

 締約国は、国際連合憲章に定めるところに従い、それぞれが関係することのある国際紛争を平和的手段によつて国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決し、並びにそれぞれの国際関係において、武力による威嚇又は武器の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎むことを約束する。

 締約国は、他の平和愛好国と共同して、国際の平和及び安全を維持する国際連合の任務が一層効果的に遂行されるように国際連合を強化することに努力する。

第二条(経済的協力の促進)

 締約国は、その自由な諸制度を強化することにより、これらの制度の基礎をなす原則の理解を促進することにより、並びに安定及び福祉の条件を助長することによつて、平和的かつ友好的な国際関係の一層の発展に貢献する。締約国は、その国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する。

第三条(自衛力の維持発展)

 締約国は、個別的に及び相互に協力して、持続的かつ効果的な自助及び相互援助により、武力攻撃に抵抗するそれぞれの能力を、憲法上の規定に従うことを条件として、維持し発展させる。

第四条(臨時協議)

 締約国は、この条約の実施に関して随時協議し、また、日本国の安全又は極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国の要請により協議する。

第五条(共同防衛)

 各締約国は、日本国の施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処するように行動することを宣言する。

 前記の武力攻撃及びその結果として執った全ての措置は、国際連合憲章第五十一条の規定に従つて直ちに国際連合安全保障理事会に報告しなければならない。その措置は、安全保障理事会が国際の平和及び安全を回復し維持するために必要な措置を執つたときは、終止しなければならない。

第六条(基地の許与)

 日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持の寄与するため、アメリカ合州国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される。

 前記の施設及び区域の使用並びに日本国における合州国軍隊の地位は、千九百五十二年二月二十八日に東京で署名された日本国とアメリカ合州国との間の安全保障条約第三条に基づく行政協定(改正を含む。)に代わる別個の協定及び合意される他の取極により規律される。

第七条(国連憲章との関係)

 この条約は、国際連合憲章に基づく締約国の権利及び義務又は国際の平和及び安全を維持する国際連合の責任に対しては、どのような影響を及ぼすものではなく、また、及ぼすものとして解釈してはならない。

第八条(批准)

 この条約は、日本国及びアメリカ合州国により各自の憲法上の手続に従つて批准されなければならない。この条約は、両国が東京で批准書を交換した日に効力を生ずる。

第九条(旧条約の失効)

 千九百五十一年九月八日にサン・フランシスコ市で署名された日本国とアメリカ合州国との間の安全保障条約は、この条約の効力発生のときに効力を失う。

第十条(条約の終了)

 この条約は、日本区域における国際の平和及び安全の維持のため十分な定めをする国際連合の措置が効力を生じたと日本国政府及びアメリカ合州国政府が認めるときまで効力を有する。

 もつとも、この条約が十年間効力を存続した後は、いずれの締約国も、他方の締約国に対しこの条約を終了させる意志を通告することができ、その場合には、この条約は、そのような通告が行われた後一年で終了する。


 以上の証拠として、下名の全権委員は、この条約に署名した。
千九百六十年一月十九日にワシントンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。
(両国全権委員氏名省略)


交換公文

(条約第六条の実施に関する交換公文)


(日本側往簡)

 書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日署名された日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約に言及し、次のことが同条約第六条の実施に関する日本国政府の了解であることを閣下に通報する光栄を有します。

 合衆国軍隊の日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行なわれる戦闘作戦行動(前記の条約第五条の規定に基づいて行なわれるものを除く。)のための基地としての日本国内の施設及び区域の使用は、日本国政府との事前の協議の主題とする。

 本大臣は、閣下が、前記のことがアメリカ合衆国政府の了解でもあることを貴国政府に代わつて確認されれば幸いであります。

 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

    千九百六十年一月十九日にワシントンで
 
岸 信介     
 
 
 アメリカ合衆国国務長官
   クリスチャン・A・ハーター閣下

(合衆国側返簡)

 書簡をもつて啓上いたします。本長官は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

(日本側書簡省略)

 本長官は、前記のことがアメリカ合衆国政府の了解でもあることを本国政府に代わつて確認する光栄を有します。

 本長官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

    千九百六十年一月十九日
 
アメリカ合衆国国務長官           
クリスチャン・A・ハーター     
 
  日本国総理大臣 岸信介閣下

 

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